「薬は飲むな!」に対する僕の意見

photoBさんによる写真ACからの写真

「薬は飲むな!」に対する僕の意見

 

 

こんにちは森田です。

先日、南日本新聞に連載中の「南点」で、「コレステロールの薬は119人に一人しか心筋梗塞を予防しない」という旨の記事を書きまして、「薬を飲むな!みたいなことを書く医者がいるのはけしからん!」みたいな批判を頂いております(^_^;)

僕としては一応記事の中で、

「薬を飲むなと言っているわけではない、119人に1人でも、かけがえのない命を救えるのならそれは非常に大きな成果である。しかし、その1人に入れるのかどうかが「確率論」であるということに変わりはない。

と言うふうに書いているので、そんなに怒られることはないかなともおもったのですが。

ま、この辺のことは週刊誌の「薬を飲むな!キャンペーン」なんかの影響もあって、医師界隈ではデリケートな話題なのかもしれません。

 

ということで、このテーマに関して、以前書きました記事をちょろっと転載したいと思います。

 

 

以下、とある取材先からとの電話対応の概略です。

 

_______

 

 

「先生、飲まなくていい薬ってありますよね。」

 

「いえ、そもそも、飲まなくていい薬、というものはありませんよ。飲む、飲まないは医師の助言と患者さんの同意のもと決まるものですから。飲みたくないならしっかりとその理由を医師に伝えて話し合った上で断るべきなのです。」

 

「でも、医者の助言もまちまちでは?」

 

「それは当然です。実は、特に慢性期医療・高齢者医療の世界の多くに正解はありません。たとえ正解と言われるような説があっても、その正解が数年後には覆されている、こんなことはよくあることです。」

 

「じゃ、患者はどうすればいいんですか?」

 

「どうすればいい・・。簡単ではないと思いますよ。どんな素晴らしい薬にも副作用はあるのですから。それでも絶対に薬が必要な時だってありますし、その薬がないと1日も生きられない人だっているのです。その人に必要な医療の量は千差万別。正解なんてないのです。」

 

 

「正解がないって言われても患者は困りますよ」

 

「そこが大事なんです。困るということは、悩むということ、自分で考えるということ。医者にお任せしてしまっているから、『医者のせい』にしたくなるのです。急病で、そんなこと考える時間がない、というケースもありますが、いま話題になっているような薬は慢性疾患ですよね。勉強する時間、考える時間、悩む時間はたくさんあるはずです。つまりこれは、『医者にお任せ』で自分の健康を外注して安心してしまっているこれまでの典型的な患者像の問題でもありますし、一方で、『この薬を飲みなさい、何も聞かないでよろしい』という父権的で(時間もない)これまでの典型的な医師像の問題でもあるのです。

  ・・でも、どちらが悪い!とかいっても始まりません。
『薬』が悪いとか、『医者』が悪いとか、『クレーマー患者』が悪い!で済むような話ではないのです。正解はないという前提のもと、たとえベストではなくても、よりベターな方法を、医師と患者がしっかりと話し合って、信頼関係のもとで、処方内容を決定する。こういう世界を模索していくべきなんです。」

「はあ、」

 

「そのためには何が必要か?たとえば・・・

 ■リフィル処方って何?(高血圧などの処方は受診無しで薬局で買える諸外国の制度) とか、

■そんなこと言っても、しっかりと患者さんに向き合ってくれる医師っているの?(日本の家庭医・かかりつけ医不足問題)とか・・

 そういうことに目を向ける良いきっかけなのではないでしょうか?」

 

 

「え〜、結局どうすれば・・・」

 

「・・・そもそも、どうすればいい?って専門家に聞いて終わりにしようと思うことが間違っているのです。そうして、判断を専門家に外注して、専門家に責任転嫁している時点で、当事者意識の欠如の現れだと思いますよ!

 何で自分の健康問題なのに、自分で考えて、自分で責任持たないんですか?」

 

「はあ、そうですか。ありがとうございました。」

 

 

 

ま、大体こんな感じですね。

こんな感じなので、記事にならない・・(^_^;)

 

 

 

 

今回のポイント

 

以上の電話対応のポイントをまとめますと、

 

◯慢性期医療・高齢者医療の世界では多くの場合きっちりした正解はない。

◯だからこそ「医師におまかせ」にせず、しっかりと自分で勉強して悩むことが大事。

◯勉強したこと、悩んだことを話し合えるような「かかりつけ医」を持って、

◯その「かかりつけ医」と相談しながら薬を決める。

 

こんなところじゃないかな、と思います。

 

 

 

 

つまり、このイラストの右側のような医師・患者関係を築きましょう。

ということですね。

 

f:id:mnhrl-blog:20161004102113p:plain

(世界で一番読まれている医学書「Where There Is No Doctor(医師のいないところで)」デビッド・ワーナー著の一節。)

 

 

 遠回りのようで、多分これが一番の近道なんじゃないかな、と想います。

 

 

 

 

こんなことが国民的議論になれば・・・

世界はまたちがう景色になると思うんですけどね。

 

 

 

 

でも・・この僕の考え方、今の世の中ではちょっと突飛かもしれませんね(^_^;)

皆さんはどう思われるでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 


コメントをお書きください

コメント: 2
  • #1

    horietomohiro (水曜日, 25 9月 2019 01:26)

    森田先生こんにちは。
    イラストの左側の患者さんは「自ら知り考え行動する努力を放棄していることを隠し、良い患者を演じ、全てを医師に任せている」状態ですね。
    薬局では「薬剤師の問いかけに答える必要も気持ちもチカラも無い、処方については何も知らない、だから答えられない。必要なら病気も体調も医師に聞け」と言われるタイプです。
    薬局・薬剤師は、急性でも慢性であっても、病態・体調、残薬・併用薬などその場での聞き取りと、処方せんと薬歴との確認から服薬指導することで、イラスト右側の状態となるよう後ろ押しに苦心します。
    薬剤師も医師と患者とそれぞれとの関係を築く努力をしていることを、皆様に広く知って利用していただきたいと思っています。

  • #2

    森田洋之 (水曜日, 25 9月 2019 17:28)

    horietomohiroさん

    ありがとうございます。薬剤師さんと患者さんとの関係性もとても大事ですよね。
    こちらの記事でそのあたりのことも書いています。よろしくおねがいします。

    https://www.mnhrl.com/reibai-2019-9-25/