
病院減少時代、今あなたに必要なこと。

2019/10/12
「今は介護してもらう必要はない。でも子どもたちは遠方だし、これからは病院にも長く入院できない。将来が不安だから早いうちに何処かの施設に入ったほうがいいのだろうか。」
最近ご高齢の方からこんな相談を頂く事が多い。先日も国が「 病院・病床の削減」の方向を明示した。まさしくこれからは医療に頼れない時代になってくる。では本当に早いうちに高齢者施設に入ったほうが幸せなのだろうか? 私はそんなとき こう答えている。
「親身になってあなたの本当の幸福を考えてくれる家庭医を探してください」と。
実は欧米には病床が日本の1/5しかない。その代わり、日本では未発達の「家庭医療」がとても充実している。家庭医療とは真に「患者中心」の医療。医師や家族の意向にもまして患者本人の幸福を重視する医療なので、住民は安心して施設でも自宅でも好きな場所で生活を継続出来る。家庭医は外来でも在宅でも医療を提供する し、「公的」存在であることがほとんどなので損得勘定抜き。英国の医師は約半数が大学卒業後すぐにこうした家庭医研修を受け家庭医になる。
英国の"信頼できる職業ランキング"では 病院専門医にもましてこうした「家庭医」の方がの上位を占めているという。
一方日本ではどうか?最近始まった新研修医制度では、世界 標準に追いつけとばかりに「家庭医」を想定した「総合診療専門医」が発足した。新人医師の約30%が その研修を受けることが想定されていたが、残念なことに実際に研修を希望した新人医師はわずか2%だった。国や医療体制の不備を責めるのは簡単だ。しかし、よく考えてみれば国民に周知されていない、望まれてもいない医療を提供する医師になれというのも酷な話である。世界標準の「家庭医療」を国民が知り、その整備を国民が求めていくこと。ここに日本人の幸福な人生を支える医療のカタチがあるのではないだろうか。
(本記事は令和元年11月14日掲載の森田洋之著、南日本新聞「南点」のテキスト版です。)
あわせて読みたい
☆コメントを書かれる際は実名と所属をお書き添え下さい。