
病院削減が命を救う?

2019/10/27
友人の家庭に赤ちゃんが産まれた。新しい命の誕生は本当におめでたく、祝福の気持ちでいっぱいだ。
しかし彼は英国在住。その英国には日本の1/5しか病院・病床がないという。さぞ不安ではないだろうか?そう訊いたら彼は「意外とそうでもない」と、こともなげに言った。
そう言えば先日「鹿県8公的病院再編必要」と言う記事が紙面を踊った。なんと全国で424の公的病院が 厚生労働省から名指しされたのだ。それでは今、日本で病院・病床を減らすということには どんな意味があるのだろうか。
たしかに、近くに病院がないと救急疾患で命を救ってもらえない、という不安もあるだろう。ただ、最も緊急性が高く命にかかわる心筋梗塞・脳梗塞・交通事故などの治療は時間との勝負、処置も大掛かりな開腹・開胸手術や血管内治療などが多く複数の医師での対応が求められる。各科複数の医師が24時間365日いつでもこれらの治療を緊急で行える体制を確保できるのは少なくとも500床〜1000床くらいの巨大病院だろう。
実はイギリスでは病院数は少ないものの、病院といえばすべて大きな総合病院。救急症例を全て受け入れるために満床にはせず、「命に関わる重症患者」は優先して治療にあたるという。冒頭のイギリス在住の友人は「日本のようにどこにでも病院があるわけではないが本当に緊急のときは病院ですぐに診てくれるのでかえって安心」と言っていた。
一方、鹿県は日本有数の病床保有県であるもののその殆どは中小病院。満床であることも多く、また大きな緊急手術には対応できないことも多い。病院再編を名指しする厚労省 が言いたいのは、 県民全体の命を守るために必要なのは単に「近くに病院があること」にもまして集約化して大きな病院を作ること、ということだろう。
限りある貴重な医療資源をどう配分しどう稼働させるか。国や県に「おまかせ」にせず、県民全員でしっかりと議論したいところである。
(本記事は令和元年10月18日掲載の森田洋之著、南日本新聞「南点」のテキスト版です。)
救急医療
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