
近所の病院が強制閉鎖?【公的病院再編報道】が実は「あなたの命のため」かもしれない本当の理由。

2019/9/30
こんにちは、森田です。
暑さ寒さも彼岸までとは、よく申しますが、まさにそのとおり涼しくなってまいりました。
で、そうなると季節は恒例の運動会シーズン。

我が家の豚児たちも走り回っておりました(^_^;)
…ということで、今回のニュース解説行きましょう。
厚労省から驚愕の発表
2019年9月26日、厚労省から驚愕の発表がありました。
それがこちら↓↓
“再編必要” 公表された病院一覧
全国424の公立病院など/NHK NewsWeb
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190926/k10012100431000.html
「再編・統合が必要」と国が各病院を名指しで指摘した…
つまり、
「吸収・合併されるかなんかして病院を縮小しなさいよ!」
と国が全国400以上の病院を名指しした、いうことです。
皆さんのお住いの地域の病院も含まれているかもしれませんので、よく見て確認してくださいね!決して他人事じゃないですので。
しかし…
たしかに医療費がどんどん上がってなんとかしないといけないとはいえ…
これからは高齢者もわんさか増える!
医師不足も大変!
そんな時代にわざわざ今ある病院を減らさなくてもいいじゃないか!
消費税を10%に上げるのだって社会保障のためって言ってるじゃないか!
と、
大声で文句を言いたい気持ち
でいっぱいになりますね。
…そう。
そうなんですが!
今回は、その気持とは全く逆のはなし。
実はこの「病院再編」が、国民の命を守るためのもの、つまり
「あなたの命のため」の政策である
という、いま知っておくとかなりお得な(知らないでいるとかなりマズイ)本当の理由をお伝えしたいと思います。
ヒントは
しゅ○○○化。
さあ、○の中にどんな文字が入るのか。考えてみてください。
救急医療は大丈夫?
そう。こんなに病院を減らしたら、もしものときに命を守る「救急医療」はどうなるんだ!
安心して地域に住めなくなる!
と思いますよね。
さあ、それについてはどうなのでしょう・・
最も緊急性が高く地域住民の命にかかわる、心筋梗塞・脳梗塞・交通事故(交通外傷)などを例に考えてみましょう。
当たり前かもですが、心筋梗塞も脳梗塞も交通外傷も、治療は時間との勝負、処置も大掛かりな開腹・開胸手術や血管内治療などが多く、殆どのケースで複数の医師での対応が求められます。
しかも、これらの疾患・外傷の発生は、24時間突然に起こります。ということは、複数の医師が24時間いつでもこれらの治療を緊急で行える体制で待機していなければいけないわけですね。もちろん、医師だけでなく看護師さん、検査技師さん、その他スタッフも当然24時間待機です。そして、その体制を1日も休まずに365日確保するためには、医師もスタッフも交代制で勤務を組まなくてはなりません。
ということは、安心して地域の救急対応を任せられる病院、というのは、循環器科・脳神経外科・一般外科・救急科など、各科にかなり多くの医師を抱える巨大病院でないと厳しい。ということがわかると思います。実際のところで言うと、それを本当に全て整備し実現できるのは少なくとも500床〜1000床くらいの病院でしょう。
今回発表されたリストに入っている多くの病院を見てみると、そうした巨大病院ではないことがわかります。
☆ここで調べると大体わかりますよ!↓↓
病院情報局:https://hospia.jp/hoslist
そう考えると、一般論として…
小さな病院がたくさんあるより、より集約化して大きな病院を作ったほうが、地域の充実した救急医療体制の確保には貢献するのかもしれませんね。
手術も安全に?
実はこれ、同じく昨今叫ばれて久しい「医師不足」や「医師の過労」の問題にも貢献することになるかもしれません。
現在は、各病院で外科や内科や産婦人科、小児科…それぞれの医師が当直・夜勤もしくは待機しており、しかも医師不足なので翌日も通常勤務、通常手術、ひどいときはその夜も当直‥なんていうことが日常化しています。
こんな状況で手術を受ける住民の方々はたまりませんね。まさに24時間徹夜明けのパイロットの操縦する飛行機に乗せられるようなものです。
まぁ、医師が徹夜明けかどうかなんて患者さんにはわからないので、ほとんどの方は知らずに手術を受けることになるのですが。
つまり、
10の小さな病院に外科医や内科医・小児科医などが散らばって毎日疲弊して業務に当たるより、一つの巨大病院に集まって集中的に患者さんを診て、それ以外の日はしっかりと休みを取れる体制の方が…集約化して大きな病院を1個作ったほうが、医師の働き方にとっても地域住民の安心にとっても「いい方向」に進む可能性が高い、ということですね。
あ…ということで、最初のクイズ。
もうおわかりだと思いますが、答えは、
しゅうやく化(集約化)
でした。
海外はどうなのか?
実はこうした『病院の集約化』という課題は海外ではかなり以前から議論されていまして、事実すでに病院の集約化は先進各国でどんどん進んでいます。米・英・仏・独・伊…どの国も「人口あたりの病床数」を軒並み減らしているんですね。
それがよく分かるのがこちらのバブルチャート。
横軸が「人口あたり病床数」
縦軸が「平均寿命」です。
先進各国が、病床を減らしながらも平均寿命を伸ばしていることがよくわかります。
ヨーロッパあたりの多くの国では、病院というものは町々にあるものではなく、おおきな市に巨大病院が1個とか2個とかそんな感じで、日本で言う「警察・消防」と同じように計画的に整備されています。その代わり救急車も救急患者もそこですべてを迅速に受け入れる(満床にはしない)、ということになっています。そして多くの場合、それは公的病院です。
日本はどうかと言うと、病院の8割が民間経営(そのほとんどは500床以下の病院)で、どの病院も満床を目指さないと経営が成り立たない…。で、どこも満床で救急を受けられず…救急車のたらい回しが…なんてことも。
先ほどの動画でわかるように、日本は人口あたり病床数が世界一(英米の約5倍)。こんなに病床があるのに、救急車が受け入れ病院を見つけるのに苦労するとは、皮肉なことです。
もっと言えば、日本はCT/MRIの保有数も世界一。外来受診数は世界二位。それなのに医師数は少ない方なんですね・・。この辺りはかなり専門的なので、詳しく知らいたい方はこちらの記事を御覧ください
↓↓
さあ、
以上の話を読んで、今回の「病院再編報道」が、国民の命を守るためのもの、つまり
「あなたの命のため」の政策でもある
ということの意味がおわかりいただけたでしょうか?
実は僕がいた夕張市も同じような話でした。
市の財政破綻の時、171床の病院がなくなって19床の小さな診療所になってしまったのですが、その後の市民の死亡率はほとんど変わらなかったんですね。
それは、そもそも171床の規模の病院では命のやり取りをするような救急医療体制をすべて整えていたわけではなかった、だからそれがなくなっても死亡率と言う意味では大して変わらなかった(市民の健康や幸福にとっては病院医療以外の要素のほうが大きかった)いうことだと思っています。
夕張のことについては、その他に「市民のきずな貯金」「生活を支える医療の構築」「終末期医療に対する市民の意識改革」など他の要素もあるのですが、、詳細はこちらの本で
↓↓
まとめ
実はこうして・・「あなたの病院、縮小するとか吸収合併されるとか再編しなさい!」ということを厚労省が名指しで病院名を指定するのはおそらく初めてのことだと思います。
名指しされた各病院にとっては死活問題ですから、相当の反発も当然予想されます。なので、よほどの覚悟の上での発表でしょう。
もちろん、
「地域の病院がなくなると不安」と言う気持ちもわかります。
たしかに病院が遠くなると大変かもしれません。
でもそれは地域のクリニックでも出来ることかもしれません。
みんなの命を守るため、
子どもたちの世代に質の高い医療を引き継いでいくため、
いまわたしたちが何をすればいいのか、
どう考えればいいのか。
国民全員でじっくりと考えていきたいですね。
以上、
近所の病院が強制閉鎖?【公的病院再編統合報道】が実は「あなたのため」である本当の理由。
でした。
ちなみに、今回の国の発表は「公的病院」のみが対象でした。
民間病院は文字通り責任の所在が民間なだけに国からの直接的な管理・指導を受けにくい立場。
ですから今回はあえて、指導の対象となりやすい「公的病院」のみだったのかもしれません。
とはいえ、先程も述べたとおり日本の病院の8割は民間病院です。国の目標の本丸は「民間病院」の集約化、であることは想像に難くありません。
でもそれが本当に実現したら、医師の働き方改革も、市民への本当の救命や高度医療も充実したものになるような気もしますね。
でも・・この僕の考え方、
今の世の中ではちょっと突飛かもしれませんね(^_^;)
皆さんはどう思われるでしょうか。
コメントをお書きください
林 悟 (水曜日, 02 10月 2019 22:03)
先日、愛知県知事が他の知事との話し合いで病院を削減しない事で話し合ったそうです。
私は森田さんの削減案に大賛成ですが 市民と行政は反対の様です、これで医者の儲けは安泰です。
患者の1,2割負担が間違いの様で、高額療養費で戻すというやり方がいいように思います、すでに行われています。そして、生活保護世帯の無料医療費は辞めて1割負担にすべきと思います。
市民の意識改革が重要と言われますが、それだけでは駄目な様です、少し昔三重県の松坂市で中山さんが市長をやっていた時医師会と対決したそうです、結果は忘れましたが中山さんが辞めました、医師会は患者を渦に巻き込んで戦ったそうです。
どんたく (金曜日, 04 10月 2019 23:48)
救急医療は何も3次救急ばかりではありません。ちょっとした傷の縫合,回転性めまいによる激しい嘔吐,麻痺性イレウスによる腹痛等,いわゆる二次救急患者をすぐに受け入れる病院が真に地域医療を実践している病院なのです。
この記事の記載は,頻繁に生じる事態と滅多に生じない事態とを一緒に論じています。大規模病院は「金になる」患者しか診ない現実に,皆さんは気づいてほしいと思います。
>とはいえ、先程も述べたとおり日本の病院の8割は民間病院です。国の目標の本丸は「民間病院」の集約化、であることは想像に難くありません。
>でもそれが本当に実現したら、医師の働き方改革も、市民への本当の救命や高度医療も充実したものになるような気もしますね。
病院名を公表するという暴挙を厚労省が行った背景には,公立病院の縮小により多大な利益を得る団体が存在するということを意味します。
黒幕は誰か想像していただきたいと思います。
森田 洋之 (土曜日, 05 10月 2019 06:16)
林悟さん
コメントありがとうございます。
愛知県はそうなんですね。残念です。
「病院を減らさない」という言い方だと市民も味方につけやすいのですが、
記事のとおり病院にも色々あって、超急性期の巨大3次病院から、地域の救急は一切診ない慢性期の療養病院まで。
そこを切り離して考えることが大事だと思います。
そのためにも診療実績の公開が必須ですね。
森田洋之 (土曜日, 05 10月 2019 06:35)
どんたく さん
コメントありがとうございます。
>救急医療は何も3次救急ばかりではありません
と言うご意見ですね。まったくそのとおりだと思います。
>ちょっとした傷の縫合,回転性めまいによる激しい嘔吐,麻痺性イレウスによる腹痛等,いわゆる二次救急患者をすぐに受け入れる病院が真に地域医療を実践している病院なのです。
こちらも全く同感です。こういう対応をしてくれている地域の病院が本当の地域医療を支えてくれる病院ですね。
そういう病院が地域にしっかりあるということは住民にとっても安心だと思います。
しかし、そうした対応をしている病院はいまどんどん姿を消しているような印象です。
分類で見ても、リハビリ病床・地域包括ケア病床・療養病床の割合が多い県では特に。
医師の間ではいわゆる「寝当直」もあれば「寝られない救急当直」もあるわけですが、市民にはそれは全く見えません。
その意味でも情報公開が待たれますね。
また、救急を支える基礎には地域で顔が見える関係の築いた家庭医療が1次救急をしっかりと支えてくれるとなおいいですね。
日本では在宅医療がそれに近いですが、若い世代には届かないのが難点です。
ヨーロッパの家庭医療はそこをカバーしているようですが。
森田洋之 (土曜日, 05 10月 2019 06:55)
なお、僕は基本的に公的病院の公としての存在はとても大事だと思っています。赤字とか関係なく。こちらにそんなことを書いています。
https://t.co/UDkWc9pb9u?amp=1