
【医師直伝】小籔千豊さんポスター騒動。そもそも「人生会議」って何?/で、どうすればいい?まで【全解説】

2019/11/30
こんにちは森田です。
ここ数日各メディアで取り沙汰されております通り、小籔千豊さんの「人生会議」ポスターが数々の批判を巻き起こしました。
結果、厚労省は即座に撤退し、各自治体へのポスター発送を中止しています。
今回の件、日々高齢者医療に携わっている身として理解できる点、出来ない点、双方の感情の狭間で揺れ動きながら推移を見ていたのですが、、、しかし一般の方々にしてみれば、、
◯今なぜ「人生会議」なの?
◯ていうか、そもそも「人生会議」って何なの?
◯なんで小藪さんのポスターが問題で、
◯我々は今後「人生会議」をどう考えて何をすればいいの?
そんな感想をもたれる方々も多いのではないでしょうか?
ということで、今回は「人生会議」についてその経緯から未来まで、【3分解説】をしてみたいと思います。
そもそも「人生会議」って何?
「人生会議」は、そもそもACP(アドバンス・ケア・プランニング)の日本での愛称です。
「だからそのACPって何だよ!」
って思いますよね。
ACPの定義はこう。
「今後の治療・療養について患者・家族と医療従事者があらかじめ話し合う自発的なプロセス 」
で、ポイントは以下
◯主体は患者、そして家族。友人も参加OK。
◯話し合いは定期的に見直され、家族や医療介護スタッフなどケアにかかわる全ての人に共有されることが望ましい。
◯話し合いの内容は以下
• 患者本人の気がかりや意向
• 患者の価値観や目標
• 病状や予後の理解
• 治療や療養に関する意向や選好、その提供体制
ま、簡単に言えば
「人生の終わりまでどうやって過ごしたい?医療や介護はどうする?そんなことを、家族や友人、医療・介護スタッフと積極的に自発的に話し合っておきましょう」
ということですね。
ま、当たり前といえば当たり前の話なのですが…、
そう、諸外国の国民の間では当たり前に進んでいるこのACPの取り組みが、ここ日本ではあまり進んでいないんです。
日本でACPが進まない理由
なんで日本でACPが進まないのか。
ま、見解はもろもろあるでしょうが、個人的にはこう思います。
「日本人は宗教をもたない人が多く、家族や近しい人たちで「老い」や「死」を語る機会が圧倒的に少ないこと」
外国では日常会話で当たり前に行われている「政治」の話も「死までの道のり」の話も、日本ではタブーですもんね。
しかし、そうやって大事なことを「見ないフリ」して蓋をしているうちに、家族は突然当事者になってしまいます。
親が救急車で病院に運ばれ、ICUで医師に「延命治療どうします?選んでください」って言われても、いままで見ないふりしてきたんだから何の準備もなし。「おまかせします」しか言えない。医療側は任されたら全力で医療をするしかないのですから、延命治療含めて出来る治療はやります。ま、こうなって当たり前です。
日本全国でこうした風景が延々と繰り返されると、医療従事者の中から自然発生的に「医療で対処するだけでは片手落ちだ。人生の終わりまで、本人にとって本当に幸せな形で最期まで過ごせるために、あらかじめ本人・家族、みんなで考えておいてほしい」という声が上がります。
また、高齢化の進行とともに毎年膨れ上がる医療費、特に終末期医療費をなんとかしたいと思っている国側にとってもこうした動きは「渡りに船」。もちろん賛同します。
ということで、実は「ACPを広めよう!」という動きがいま国を上げて進行中なのです。
すでに一部の病院の収益にはACPしていないと貰えないと国の規定で決まっているものまであるのです。
ま、国側の思惑はどうあれ、「本人にとって本当に幸せな形で最期まで過ごせる」のなら、国民にとってもいい話です。
どちらかというと、これまで「病院にお任せ」しか選択肢がなかった日本の医療文化の中で、「自分たちで決めていいんだよ」という国側・医療側から提案があったわけですから、これはある意味
「医療の民主化」
と言う意味で画期的な流れと言ってもいいと思います。
僕も大賛成。ACPはどんどん拡散してほしいところです。
ということで、国側は「ACP」なんていう難解な言葉にわざわざ「人生会議」という愛称をつけてまでACPの普及啓発活動を展開していたわけですね。
が、、とは言えそれでも皆さんが「人生会議」について知らなかったように、国民には一向に広まらなかった。
で、業を煮やした国側が吉本興業に広告を依頼。
結果、小籔千豊さんを起用した尖ったポスターを作った。
そしたら炎上しちゃった←いまここ。
というのがここまでの流れなのです。
小藪さんのポスターの何が問題?
では、当のポスター、何が問題なのでしょうか?
批判的なご意見の多くは、おおよそこの2点だと思います。
■ACPは「最期まで本人の希望通り生きる」ための自発的な話し合いのプロセスが最も大事なのに、ポスターはまるで「死に方を決めておく」ことへの脅迫のようなメッセージになってしまっている。
■現在闘病中の方や、遺族の方々にとっては非常に不快に思われるのではないか。そういう方々に配慮が足りないのではないか。
まさにそのとおりですね。
僕もそのご意見にまったく同感です。
こうした「死」というタブーで蓋をされていた話題を取り出すときは、真綿で包むように慎重に「そっと」行われるべきだと思います。
ただ、こうも思います。
そうやって多方面に配慮して、エッジを削って、柔らかなメッセージを送っていたからこそ、これまで「ACP」も「人生会議」も国民に周知されなかったのでは?と。
ポスターというのは広告です。広告は「広く」みんなに「告げ」られなければ意味がありません。「きれいだけど誰にも刺さらないメッセージ」を送っても、広告にはならないんですよね。
今回の案件は、従来どおり普通の広告代理店に頼んで、無名のタレントさんを使って無難に当たり障りのないお役所的な仕事をしていれば、誰にも文句を言われず(そのかわり「人生会議」も世間で話題になることなく)終わっていた案件でしょう。
そういう意味で、あえて厚労省が吉本興業を使ってまで真の意味で「広告」に打って出たことは、一定の評価をしてもいいのでは、とも思います。
じゃ、どうすればいい?
では今回の件で「人生会議」の大事さを知ってしまった皆さん。特にご高齢の方々。
皆さんは、これからどうすればいいのでしょうか?
そんなに簡単に「人生会議」なんて開けませんよね。何のきっかけもないのに。
そこで今日は2点、そのきっかけをご提案したいと思います。
①緩和ケア医/プライマリ・ケア医/家庭医/在宅医/総合診療医を探す
こうした「人生会議」を扱う医療の分野はそんなに多くありません。
特に、消化器内科や心臓外科などの臓器別専門医の医師にとってこういう分野は専門外であることが多いです。
その点、上記の5つの分野の医師は、「患者の人生に寄り添い、最期まで幸せに生きる支援をする」ことを教育されています。
最近は各診療所・クリニックでも、ドクターの経歴が公開されていることが多いですので、かかりつけ医を選ぶ際、ホームページで
■緩和ケア医
■プライマリ・ケア医
■家庭医
■在宅医
■総合診療医
などの「キーワード」を確認するのも一つの参考になるでしょう。
②「もしバナゲーム」
「きっかけもなしに人生会議なんて出来ない!」
とお思いの諸兄も多いのではないかと思います。
そんなあなたにおすすめなのがこちら、「もしバナゲーム」。
:筆者撮影
このカードを使えば、「死」にまつわる話しづらい話題をみんなで考えたり、話し合うことが簡単に出来てしまいます。
また、ゲームを通して友人や家族にあなたの思いを伝え、理解してもらうきっかけにもなります。
ゲームのプレイの仕方は「ソリティア」「ペアーズ」の2通りありますが、ここでは詳細は省きます。
もうすぐお正月。お子さん供やお孫さんが集まったとき、さり気なくこたつの上にこのカードゲームがあったりして、「じゃ、みんなでやってみようか」なんてことになったら、面白そうですね。
「ウチのお母さん、そんな事考えてたんだ!」
とか
「お父さん、××よりも○○のほうが優先順位高いんだ!」
など、意外な発見があること間違いなしです。
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以上、【医師直伝】小籔千豊さんポスター騒動。そもそも「人生会議」って何?/で、どうすればいい?まで【全解説】でした。
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