オミクロン第6波が来る!いま日本人が知っておくべき4つのこと

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オミクロン第6波が来る!いま日本人が知っておくべき4つのこと

 

森田 洋之
2022年1月2日 
 


こんにちは、医師・医療経済ジャーナリストの森田です。

新型コロナウイルスのオミクロン株、市中感染が連日報道されていますね。

今回は、その来たるべきオミクロン株の第6波に向けて、「今日本人が知っておくべき4つのこと」をお話したいと思います。

要約すると以下になります。

・ピークはいつ?
・弱毒化は本当?
・病床整備はどうなってる?
・まとめ

なお、僕はどちらかと言うと、細胞とか免疫とかそういういかにも医学的なミクロの世界から考える方法(演繹的思考)より、過去の統計など事実から類推する方法(帰納的思考)のほうが得意なので、そちらの方向から考えることを事前にお伝えしておきます。

 

まず、ピークについてです。

いやその前に、そもそもオミクロン株の第6波は本当に来るの?

というところから確認していきましょう。

その際に参考になるのが、こちら。

 

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出典:新型コロナウイルス ゲノムサーベイランスによる系統別検出状況(国立感染症研究所)https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000871321.pdf

上の図では、山が5回ありますね。

これが日本で起きた第5波までのコロナ感染です。

一番右のピンク色が直近第5波のデルタ株ですね。

 

(再掲)

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これでまず分かるのは、日本ではデルタ株(ピンク色の山)も大きな波を超え現在はほぼ終息している、ということです。

もう一つ、このグラフで分かる重要なことは、

 

「一つの株が一つの波を形成している」

 

ということです。

つまり感染力の強い新しい変異株が一つ出現すると、3〜4ヶ月ほどかけて全国に広がり一つの波を形成し、その後収束していく。

というパターンが見えてきます。

今回のオミクロン株は世界的に広がりを見せているので、普通に考えれば日本でも今後第6の波を形成すると考えていいでしょう。

 

では、どれくらいの期間でオミクロン株が日本に広がっていくのでしょうか?

下のグラフを見てください。

(再掲)

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赤い矢印の通り、全国に広がっていく期間が変異株ごとにだんだん短くなって、短期間に急速に広がっていることがわかります。(PCR検査体制が限定されていた第1・2波は除外します)

 

そもそも、ウイルスというのは変異するごとに

・感染力は強くなるが

・毒性は弱くなる

 

ということが一般的に言われています。(「毒性が弱くなる」の部分は後述します)

 

上のグラフを見ると、今回のコロナウイルスも変異を繰り返すごとに感染力が強くなる(短期間に急速に広がっていく)というパターンが見えてきます。

感染力が強くなるので

・急速に広がり

・同時に感染者の数も増える。

 

このグラフを見るとそれがよくわかります。

(再掲)

スクリーンショット 2021-12-27 14.53.35を拡大表示

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ただ、これはこれまでの話。

オミクロン株ではどうなのでしょう?

いまのところ、今回のオミクロン株も世界的に「急速拡大」が報告されています。

たとえば、オミクロン発祥の国と言われる南アフリカ。
すでに感染の殆どがオミクロン株の置き換わっていると言われています。
その南アフリカの感染経緯のグラフがこちら。

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感染拡大期、つまり山の上昇部分、に注目するとこうなります。

 

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今回のオミクロン株が一番右の波ですが、明らかにそれ以前より急峻です。
これを見ると、やはりオミクロン株の感染速度もかなり早くなっていると言えるでしょう。(ついでに言えば、それと同じくらい急速に収束に向かっているようにも見えます。)

 

では、日本でのオミクロンのピークはいつなのでしょう?

これまでの日本のパターンは、3〜4ヶ月かけて広まりピークを迎えるのが通例でした。それより早いと仮定すれば、今度のオミクロン株は感染拡大開始から1〜2ヶ月くらいでピークを迎えるのかもしれません。上記、南アフリカのグラフを見てもだいたい1ヶ月位でピークに達していますし。

日本ではいまちょうど市中感染が出始めたところなので、今を起点と考え、1〜2ヶ月後ということは、

 

ピークは1月末〜2月?

 

というところでしょうか。

 

 

弱毒化は本当?

 

オミクロン株は感染力が強く、急速に広まる傾向にある、ということがわかりました。

では、

ウイルスは変異するたびに弱毒化していく

という部分は本当なのでしょうか?
今回のオミクロン株にも当てはまるのでしょうか?

まず、これまでの傾向を見てみましょう。

日本における感染者数の推移は、先程見たとおりこんな感じ。

 

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新しい変異株が出るたびに一つの波が形成され、更にその波は大きなものになっているのが分かります。オリンピックの頃にやって来たデルタ株の第5波が過去最多の感染者数を記録したことは記憶に新しいところです。

一方こちらが、新型コロナによる死者数のグラフ。

 

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過去最大の感染被害だったデルタ株も、実は死者数は減少していたのです。

つまり、あのデルタ株さえ「弱毒化」していたということですね。

では、来たるべきオミクロン株はどうなのでしょうか?

ここで参考になるのは、やはり世界で最初にオミクロン株が流行し、すでに収束に向かっている南アフリカです。

その南アの感染者数と死者数のグラフがこちら。

 

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こちらの南アフリカのデータを見る限り、オミクロン株の感染者数は過去最高まで増えたのに、死者数はほとんど増えなかったことがわかります。

もちろんこれから増える可能性もないことはないですが、感染者数がすでに急速に減少しているので、前回の波(デルタ株)の死者数を上回るまで増えることはまずないでしょう。

つまり、南アフリカのオミクロン株はデルタ株より「弱毒化」していた、と言っていいと思います。

 

これは、同じく現在オミクロン株が席巻していて過去最大の感染者数を出しているイギリスでも同じ傾向です。

 

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もちろん、日本でも同じ様に「弱毒化」するかどうかはわかりません。

ただ、日本でもデルタ株でさえ弱毒化していたわけです。
また南アフリカやイギリスなどオミクロン株感染が先行している国でオミクロン株はデルタより弱毒化しています。

そう考えると、日本のオミクロン株も、かなり弱毒で広まっていく(逆に感染者数は増える)可能性が高いのではないでしょうか。

ということで、結論としては、

・ピークはいつ?→ピークは1月末〜2月?
・弱毒化は本当?→多分本当、でも逆に感染力は高まり感染者数は増える?

そのためにも、相応の医療体制が準備されてしかるべきでしょう。

では、それに備える我々の側の要因、「医療体制」の方はどうなっているのでしょう。

 

 

病床整備はどうなってる?

 

覚えておられると思いいますが、8月、オリンピックのときに訪れたデルタ波の第5波はまさに医療崩壊でした。

 

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3万7千あったコロナ病床はあっという間に埋まり、自宅療養患者は13万人にのぼりました。

その時の逼迫したニュース…がこちら。

 

 

あの夏の第5波のときは日本国民全員がハラハラしてましたよね。

あれからもうだいぶ時間が経ってるし、今は感染者数も何故か激減しているので印象が薄くなってきているとは思いますが…。

 

ではその後、病床整備はどうなったのでしょう?

厚生労働省の発表では、日本全国のコロナ病床はこの様になっています。

 

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出典
厚生労働省・療養状況等及び入院患者受入病床数等に関する調査について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/newpage_00023.html

 

よく言えば微増。
率直に言って「殆ど変わっていない」というところでしょう。
第5波のときに発生した自宅療養者13万人を想定したら、そこには到底及ばない確保病床数でとどまっています。

 

ちなみに、日本は世界最大の病床数と医療機器を持っているんですけどね。総病床数は160万床。そのうちコロナに割いているのは2.5%の4万床です。

いや、良いんですよ。スウェーデンのように、感染者急増の兆候が見えたら数週間で一気にコロナ病床を数倍に増やす(そして波がひいたら戻す)とかが出来るなら。
こちらはコロナ禍初期の日本とスウェーデンの病床数の推移、全然違いますね。

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こちらはスウェーデン在住の泌尿器科医師、宮川先生のご投稿。

まったく感染症専門ではない泌尿器科の病棟も一気にすべてコロナに置き換わったとのことです(もちろん迅速に元に戻したのこと)。

 

御存知の通り、日本の医療行政および医療業界はこの2年間、そういう迅速な対応が全く出来ませんでした。おそらく今後も出来ないでしょう。

(その根底には、医療業界全体が民間ビジネスに委ねられてしまっているという大きな問題があります。以下参考↓)

 

 

思い出してください。

第1波が来る!ということで緊急事態宣言が出たあの緊迫した2020年の春…

緊急事態宣言の目的は

「感染者数が一気に増大すると医療逼迫・医療崩壊するので、それを防ぐために緊急事態宣言を出して感染者数の伸びを抑制し、その間に医療体制を充実させる」

というふうに説明されていました。

国民は「医療の準備が整うまでの時間稼ぎ」という名目で外出を控え、お店を閉め、学校を休校にし…結果町から人がいなくなったのです。

で、あれだけ国民に行動制限や営業自粛を要請しておきながら、医療体制の方は2年経っても「2.5%」しか準備できていない。

しかも、その2.5%しかない確保病床すらあてにならないのです

医療逼迫で自宅待機者が溢れていた第5波当時、あの尾身さんが理事長を務める病院(JCHO)ですら、その確保病床の半分近くしか使っていなかった(残り半分は空床、つまり俗に言われる幽霊病床)とのこと。コロナ病床の補助金もらってたのに。

 

これは尾身さんの病院だけの話ではないでしょう。正直言って、医療業界全体が犯してしまった国民への裏切りと言っていいと思います。猛省するべきです。

ま、僕がそんなこと言っても医療業界が猛省するはずないし、来たるべき第6波でもおそらくは医療体制はそのままで誰も動かないでしょう…

結果として今後は雪崩のように、

1,軽症を中心に患者が増大する

2,保健所の追跡機能・検査機能が追いつかなくなる

3,病院や宿泊施設も満床になってくる。(運用次第では重症病床も埋まる?)

4,その結果、在宅待機患者が増大し、一部重症患者も入院できなくなる

5,医療崩壊

 

という第5並みと同じパターンが繰り返されるのではないでしょうか。

だって、医療側はほとんど第5波のときと対応力が変わっていないのですから。

 

ま、今回のオミクロン株はほとんどが軽症らしいので、それも杞憂に終わる可能性もかなりありますけど。

でも、最悪のケースを想定して体制を整えておく、少なくともいざというときに迅速に対応できるように準備しておく、というのは当然の戦略だと思います。

日本より病床が圧倒的に少ない諸外国(英米でさえ人口あたり病床数は日本の5分の1くらい)は、日本の数十倍の被害だったにも関わらず、その分迅速に、数週間でコロナ病床を倍増するなどの対応でコロナ禍を乗り切ってきたのです。

日本の医療業界が迅速に対応できないというのはもう実証済みなので諦めましたが、いざそのときになって国民の「気の緩み」などと責任転嫁するのは絶対にやめてほしいですね。国民に行動制限や営業自粛を求める前に、医療業界に出来ることは甚大にあるのですから。

 

 

まとめ

 

これまで見たとおり、第6波に向けて我々が知っておくべきことは、

・感染は急速に広がり、ピークは1月下旬〜2月?
・感染者は増えるが、弱毒化により重症・死者数は減る?
・それに対応する医療側は第5波からほとんど変わっていない

というところです。

こうしてデータや数字などから現状を把握し、それに基づいて対策を考えることは非常に大事なことなのですが…

でも、そこにばかり着目していると視野がどんどん狭くなってしまいます。実は、大事なことはもっと深いところにあります。

そもそも、医療の目的とは何でしょうか?

医師法第1条には、

「医師は(中略)国民の健康な生活を確保するものとする。」

と書いてあります。

もちろん新型コロナにかからないことで健康を保つことも大事でしょうが、過渡の自粛や行動規制で親しい人たちとの交流が減ってしまって本当の健康が得られるのか?という視点も大事です。

健康とは体の話だけでなく、心の健康も、社会的な健康(絆を紡ぐことで生まれる良好な人間関係・コミュニティー)も含まれるのです。

この2年間のコロナ対策で、経済は落ち込み、学校は休校・リモートになり、高齢者は施設に閉じ込められました。その結果、2020年の自殺数は激増し、子供の自殺は過去最高となりました。

果たして我々医療従事者は本当に「国民の健康な生活」を確保できたのでしょうか?

 

そもそも、新型コロナの他にも感染症はたくさんあります。
肺炎による死者数は毎年10万人、多いときで12万人です。
インフルエンザは毎年1000万人がかかって、多いときは1万人が亡くなると言われています。
一方、新型コロナの死亡はこの2年で1万8000人。
どの感染症もその死亡のほとんどは高齢者です。

人間の死亡率は100%。
非常に残念なことですが、高齢になれば様々な理由で人は死にます。
新型コロナもその一つと考えるなら…
社会全体でもっと最適解があったのではないでしょうか。

特に、来たるべきオミクロン株は「弱毒化」が予想されています。
これまでと同じ対応が、第6波で「最適解」である可能性は、これまでにもまして低くなるのでしょう。

過剰な感染対策が、かえって国民の「健康」を脅かすことはすでにわかっています。感染症の専門家は感染を抑えることが仕事ですので、彼らにおまかせしていたら、

「感染はおさまったけど社会はぶっ壊れた」

 

ということになりかねません。

 

だからこそ日々の感染者数などの数字に一喜一憂せずに、

今こそみんなで、

 

どこまでが社会全体の「最適解」なのか?

 

を真剣に議論すべき時なのではないでしょうか。

 

 

以上、「オミクロン第6波が来る!いま日本人が知っておくべき4つのこと」でした。

 



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