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10/16放送NHKクロ現で炎上中の「身体拘束」〜医療従事者なら知っておくべき医療経済学・政策的視点〜

10月16日放送NHKクローズアップ現代より著者撮影

10/16放送NHKクロ現で炎上中「身体拘束は絶対悪?必要悪?」〜医療従事者なら知っておくべき医療経済学・政策的視点〜

2019/10/18

 

 

 

こんにちは森田です。

 

2019年10月16日、NHKクローズアップ現代で「徹底討論! それでも必要?一般病院の“身体拘束”」が放送されました。実はこの番組、前月9月に放送された同様の番組に対するSNSなどで膨大な反響(炎上?)があり、それに対応する形で制作されたものだそうです。

 

 

 

今回も、放送中からその後まで、ツイッターなどで多くのご意見が流れました。見てみると、主に病院の現場で奮闘する方々から「身体拘束廃止は非現実的」と言うご意見が多いようです。

 


 ■ツイッターで「身体拘束」を検索したもの↓

https://twitter.com/search?q=%E8%BA%AB%E4%BD%93%E6%8B%98%E6%9D%9F&src=typed_query

 

 

 

 

で、今回はこの問題を少し広く俯瞰して医療経済・政策的に議論を展開したいと思います。

 

 

 

現場のご意見

 

 

 

 

番組の中ではこんな意見が紹介されていました。

 

◯40代看護師

「ずっと、その人につきっきりでいることができるのであれば、それ(身体拘束)をしない方法っていうのはできると思うんですけど、やっぱり40人を3人でみるっていう状況の中では、難しいですよね。」

◯20代看護師

「(身体拘束をしないで)患者さんがこけてしまって頭をぶつけて、脳内出血して、そこからの後遺症で歩けなくなってしまったとか、亡くなってしまったっていう患者さんも、本当に多く見てきたので。医療者側だけでは無理だっていうところをもう少し放送していただいたほうが・・・。」

◯40代の看護師

「安静にさせるためには身体拘束をするしかないんです。暴力を振るわれても我慢。看護師も守らないといけません」。

 

 

まあ、簡単に言えば

 

身体拘束がだめなのは誰だってわかっている。

 

  ↓

患者さんを守るためにも、看護師を守るためにも身体拘束は仕方ないこともある。

  ↓

 

つまり現場は人手不足!

 

ということでしょう。ツイッターでもこうしたご意見が多かったです。

 

では、なぜ医療の現場はこんなに人手不足なのでしょうか?

 

 

 

日本の医療提供体制

 

 

 

なぜこんなに人手不足なのか!?を考える時、日本だけでなく外国と比較してみると意外なことがわかります。

 

そう。日本の医療現場ではこんなに人手不足、じゃ外国はどうなの?

 

ということで、日本外国と比較した実際にデータを見てみます。

 

まず、医師数。

 

各国の人口あたりの医師数がOECDのHPに載っていますね。

 

 

 

お〜、日本はかなり少ないほうですね。

 

これは医師不足になりそうです。

 

…ただ、今回は「身体拘束」と言う話題。その主戦場にいるのは医師というより看護師さんの方かも知れません。

 

上記NHKクロ現でも、現場の意見を言ってくれていたのは看護師さんが多かったですし。

 

では、看護師さんの数を外国と比較してみましょう。

 

こちらも人口あたりの看護師数がOECDのHPに載っています。

 

 

あれ?看護師さんの数自体は諸外国の中でも中の上くらいですね。

 

そんなに少ないわけじゃない…。

 

じゃ、どうして

 

「患者さん40人を3人でみなきゃいけない」

 ↓

「身体拘束やむを得なし」

 

みたいな議論が日本で起きるのでしょうか?

 

 

その理由がこちら。

 

 

 

「人口あたり病床数」です。

 

 

 

 

 

 

意外と知られていないんですが、日本は「人口あたり病床数」が世界一で、イギリス・アメリカの大体5倍くらいあるんですね。

 

 

しかも、日本の病院は「常に満床」を目指さないと赤字に転落してしまいます。つまり、この世界一多い病床も殆ど満床なわけです。

 

 

そりゃ入院患者数が5倍だったら、看護師数が中の上くらいじゃ全然追いつかない→「人手不足」も当たり前ですよね。

 

 

ちなみに、この「人口あたり病床数」はここ50年でこんなふうに推移しています。

 

横軸が「人口あたり病床数」

縦軸が「平均寿命」

丸の大きさが「医療費(対GDP比)」です。

 



先進各国ではここ50年で、平均寿命はどんどん伸びている(高齢化は進んでいる)のに、「人口あたりの病床数」をどんどん減らしていることがわかります。

 

その理由は、諸外国と日本のにおける「病院」の意味合いの違いなのかもしれません。

 

つまり、日本では病院の中に「療養」や「介護」など「長期入院」の概念が含まれているのですが、諸外国では「病院」というのは「急性疾患の治療や大きな手術の場」であって、長期に入院するところではないのです。

 

そのことも、データに如実に現れています。

 

こちらがOECD各国の「平均在院日数」。

 

 

 

 

 

日本、ダントツの世界一ですね(^_^;)。

 

まあ、諸外国では、「生・老・病・死」のうち本当に医療で解決できる「病」の部分のみの対応を病院が担当しているのに対し、日本では「老」も「死」も(本日講演してきた助産師会の方々のお話では「生」の部分も)病院にお願いするのが普通の文化が国民の中に根強く浸透していますからね。患者数も多くなると思います。

 

そしてまた病院側もその「ダントツ世界一の病院依存文化」によって経営を維持している側面もあります。

 

 

…さあ、医療現場の「身体拘束」をなくすために…「人手不足」を解消するために…私達は何をすればいいでしょうか。何から始めるべきなのでしょうか。。。

 

 

 

 

皆さんはどう思われるでしょうか。

 

 

 

 

追記:

今回は「医療経済学・政策的視点」でしたので、身体拘束についての「ケアの質」や「現場の対応の問題」については言及しませんでしたが、もちろんその方面にも課題はあると思います。

 

 

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コメント: 2
  • #1

    杉山絵里 (日曜日, 20 10月 2019)

    医療の必要のない、レスパイト的な病床利用が、今だにベッド回転率をあげるためにされている。不要な検査と供に。
    看護師、助手、子メディカルは、ステーションや他の場所に居て患者の部屋には居ない、だから転倒転落、ルートやカテーテルの様子をを誰も把握できない。
    当然のように拘束が必要と洗脳されている。
    先日、セル看護方式の研修をうけた。少ない医療人材を如何に患者の傍らに寄り添えるか、安全の担保をするか?を今までにない視点で見直した画期的な、看護の脳内改革だ。
    放置時間があるからこそ、事故は起きる。だれかしらがそこに居れば、事態は改善するのである。眠りセンサーなどITによる見まもりも、駆けつけるまでに時間を要する。
    ①必要のない入院をしない。漫然と入院させない。
    ②職員がだれかしら、部屋にいる状況、多数を集めて見守れるをつくる。助手でも、ボランティアでも、家族でも、タイムシフトで。
    いづれにせよ、厄介な時はねかせておく、という頭の固いままでは問題は改善しない。

  • #2

    森田洋之 (日曜日, 20 10月 2019 17:37)

    杉山さん
     コメントありがとうございます。
     同じような光景はよく見ています。セル看護方式というのは初耳でした。勉強してみます。