専門家がゼロコロナを目指してしまうのは構造的問題であることを「取引の2類型」で確認した話

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専門家がゼロコロナを目指してしまうのは構造的問題であることを「取引の2類型」で確認した話

森田 洋之

 

 

 

こんにちは森田です。

 

 

ジメジメした季節になってまいりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。 

 

先日ちきりんさんの

 

 

「徹底的に考えてリノベをしたら、みんなに伝えたくなった50のこと」

 

 

 

 

 

 

 

を読んだのですが、その中に、専門家がゼロコロナを目指してしまうのが構造的問題であることを考えるきっかけになった「取引の2類型」という考え方が書いてありましたので、今日はそれを簡単にご紹介しようと思います。

 

前振りは短めに。早速本題いきましょう。

 

ちきりんさん曰く

 

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世の中の取引には、売り手と買い手が「等価な価値を交換する取引」「両者で共に創出した価値を分け合う共同プロジェクト型の取引」があります。日常的なお買い物の大半は前者です。


(中略)自分のやっているビジネスが等価交換型の場合、共同プロジェクト型の取引について理解するのがとても難しい。自動車メーカーの人は、車の対価(代金)を受け取る際、常に「完璧な自動車」を顧客に提供します。指定された色、オプション、納期・・(中略)、それらはすべてメーカー側が単独で責任を負って提供すべきものであり、買い手側の協力が必要になったりはしません。客が提供すべきなのはお金だけなのです。

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なるほどですね。本の中でちきりんさんも言及されていますが、『医療』の世界は『共同プロジェクト型』の典型例と言えると思います。

 

診療はお金との等価交換で行われるものではありません。『お金払うからさあ治せ。完璧な医療を提供しろ』とベッドに横になって開き直られても僕ら医師はとてもつらいのです。

 

 

まず『問診』に協力してくれないと正確な診断にたどり着けないし、また治療の際にも患者さんに協力してもらって、汗をかいてもらわなければできない治療も山程あります。糖尿病などの生活習慣病は、まず最初に患者さんの生活習慣の改善が必要ですので、まさに『医師と患者の共同プロジェクト』です。

 

まあ、急性期医療、特に救急医療や外科手術などでは患者さんに意識がなくて何もできないこともあるわけで、その場合は

 

「つべこべ言わずに治療を受けときなさい」

 

という医療でも問題ないのかもしれません。そこは『共同プロジェクト』とは言いにくい部分でもあります…

 

でも逆に、前述の生活習慣病もそうですが、さらに終末期医療などすでに医療で解決できる部分が殆どなくなってきているような段階においては、「患者さん・ご家族と一緒に悩んで『納得』を醸成していく」という過程こそが重要になってきます。ですので、これはまさに「共同プロジェクト型」と言っていいでしょう。

 

そう考えると、医療においては緊急手術などの急性期医療は「等価交換型取引」に近く、一方で中高年の生活習慣病や高齢者(終末期)医療の分野ではより「共同プロジェクト型」の側面が強くなっていくような気がします。

 

 

では、今回の新型コロナ感染症はどちらでしょう?

 

もちろん、新型コロナ感染症は元気な方でも急激に悪化して治療が必要になることがあるわけですから、どちらかと言うと急性期医療の「等価交換型取引」に近いように思えます。

 

ただ、患者さんを救う急性期医療の「現場」ではなく、社会全体としてコロナとどう向き合うか、コロナを政策とみたときはま視点が違うのではないかと思います。

 

どちらかというと今は国民も政治家も、

 

「国民は感染対策という多大なコストを払っているんだから、感染症とか難しいことは医療の専門家がしっかり考えてくれよ」

 

と、「等価交換型取引」の関係性のまま、専門家や分科会にコロナ対策を丸投げしている感じがします。

 

丸投げされた方の専門家は、自動車メーカーの方々が「完璧な自動車」を提供するのと同様に

 

感染対策の完璧な結果=「ゼロコロナ」

 

を提供すべきと捉えざるを得ないでしょう。

 

あまりにも大きな感染対策のコスト(対価)を国民に要求してしまったのですから、中途半端な結果でお茶を濁せなくなってしまっているのです。

 

 

もちろん、ダイヤモンド・プリンセス号くらいのまだまだ初期の封じ込めができた時期なら「ゼロコロナ」 という「等価交換型取引」で良かったのかもしれません。しかし、今の日本は新型コロナをほぼ2年間経験し、すでに「ゼロコロナ」は現実的ではありません。

 

 

我々医療側はどこかの時点で、

 

 

「ゼロコロナを目指せば経済が破壊され貧困・自殺の増加、教育の現場の混乱、子供の免疫力低下など副作用が大きく出ます。かと言ってノーガードで臨むのもリスクが高い。感染症対策の世界に完璧な商品はないので、みんなで一緒に考えて、良いポイントを探りながら共同でいい形に作り上げていきましょう」

 

 

と国民に語りかけるような「共同プロジェクト型取引」に移行すべきではなかったのではないでしょうか。 

 

 

 

 

ちきりんさんは更に続けます。

 

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実はリノベ会社の人もリノベが共同プロジェクトだということを言語化できていません。それを理解している客を「やりやすいお客さん」、理解していない客を「やりにくいお客さん」だと思っているだけです。

(中略)ざっくり見積もって、世の中の労働者のうち「共同プロジェクト型の取引」に従事しているのはせいぜい2割です。日本はメーカーが多いので、多くの人は「完璧な商品を提供するのが売り手側の責務」だと信じて疑いません。

(中略)人生の早いうちに世の中には等価値交換型の取引に加え、共同プロジェクト型の取引が存在するのだと気づくことのメリットは、だれにとっても大きいはずなのです。

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これはまさに、今回のコロナ禍にも当てはまることでしょう。

 

世の中には顧客も(国民や政治家も)汗をかかなければいい結果に結びつかない「共同プロジェクト型取引」というものがあり、コロナ禍という社会問題は専門家に任せて文句を言うだけでなく、国民一人ひとりが自分ごととして 受け止めてみんなで考える、こうした過程を経なければいい結果にならないものない…こうした認識が、国民の側にも、医療の専門家の側にも、政治家にも必要だったのではないでしょうか。

 

なぜなら、

 

厳重な感染対策という多大なコストへの対価物を求められた専門家は「ゼロコロナという完璧な商品」を提供するしか方法がない。

 

のですから。

 

 

 

しかし、こうして「等価値交換型取引」と「共同プロジェクト型取引」として、明確に言語化して切り分けていく考えると、頭の中もスッキリと整理されて、コロナ禍の問題すらもスッキリ明快に理解できて、とてもありがたいですね。

  

 

ちきりんさんに感謝!

 

 

今回は以上でした。

 

 

 

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